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久山町研究とは

地図 当教室では、1961年から、福岡市に隣接した糟屋郡久山町(人口約9,000人)の住民を対象に脳卒中、心血管疾患などの疫学調査を行っている。久山町住民は全国平均とほぼ同じ年齢・職業分布を持っており、偏りのほとんどない平均的な日本人集団である。研究の発端は、日本の死亡統計の信憑性に疑問が投げかけられたことにある。当時、脳卒中はわが国の死因の第1位を占めていた。なかでも、脳出血による死亡率が脳梗塞の12.4倍と欧米に比べて著しく高く、欧米の研究者からは「誤診ではないか」との声が上がった。しかし、それを検証するための科学的なデータがなかった。そこで日本人の脳卒中の実態解明を目的として始まったのが久山町研究だった。

 1961年から追跡を開始した第1集団(剖検率80%)の初期のデータでは、脳出血による死亡率は脳梗塞のわずか1.1倍。死亡診断書に病型診断の誤りが数多く含まれていたであろうことを、剖検という科学的な手法で証明した。

 久山町研究の最大の特徴は、この剖検率の高さにある。正確な死因を知るという点において、剖検以上に正確な診断方法はない。追跡調査の精度も高い。これまでに行方不明となった対象者は数例に過ぎず、追跡率は99%以上。また、久山町研究では40歳以上の住民を5年ごとに集団に新しく加えているため、生活習慣の移り変わりの影響や、危険因子の変遷をもうかがい知ることができる。

 最近では、衛生・公衆衛生学分野の教室員の他に、九州大学病態機能内科学、精神科神経科、心療内科、循環器内科、呼吸器科、眼科、整形外科、麻酔科、泌尿器科、予防歯科などから大学院生や若手研究者が集まり、研究テーマが生活習慣病全体に広がった。久山町研究は、臨床と疫学の両方を俯瞰できる幅広い視野を持つ人材を育てるユニークな疫学研究である。2002年に、従来の環境因子に遺伝子解析(SNPs)を加えた生活習慣病のゲノム疫学がわが国で初めて開始され、成果をあげている。

九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野久山町研究室MAP
福岡県糟屋郡久山町大字久原1822-1ヘルスC&Cセンター内

(TEL)092-652-3080, (FAX) 092-652-3075 (e-mail)info_eph@hisayamalife.or.jp

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