HOME > 研究テーマ > 高血圧

研究テーマ

  • 脳卒中・虚血性心疾患
  • 認知症
  • 慢性腎臓病
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 胃癌・大腸癌
  • ゲノム疫学
  • 眼科
  • 心身医学

高血圧

高血圧(Hypertension)

 高血圧は、内科医の日常臨床で診療の機会が最も多い疾患である。血圧は加齢とともに上昇するため、急速に高齢化社会を迎えつつあるわが国では、高血圧患者のさらなる増加が予想される。一方、高血圧は動脈硬化を促進し、脳、心、腎など主要臓器を障害する大きな要因であることが知られている。

 久山町研究では1961年,1974年,1983年,1993年,2002年の各集団の健診成績を比較し、高血圧の時代的推移を検討した。その結果、過去40年間に高血圧頻度そのものはほとんど変化なかったが、降圧治療の普及によって高血圧者の血圧レベルが大幅に低下した。また、非高血圧者の追跡調査より、高血圧発症の危険因子として肥満、アルコール、高インスリン血症(インスリン抵抗性)の影響を明らかにした。

 次に、1988年の集団を19年間追跡した成績から、血圧レベル(米国高血圧治療ガイドライン、JNC-7の血圧分類)と心血管病発症との関係を検討した。その結果、心血管病の累積発症率は血圧レベルとともに上昇し、正常血圧に比べて高血圧前症の低い範囲(120〜129/80〜84mmHg)から有意差を認めた。同様の関連は脳卒中、とくに脳出血で認められたが、虚血性心疾患発症のリスクは高血圧ステージ2で有意に高かった。さらに、久山町の連続剖検例において血圧レベルと腎細動脈硬化との関係を検討した成績では、血圧レベルと細動脈硬化には直線的な関係が存在し、高血圧前症(120-139/80-80mmHg)から細動脈硬化を有するリスクが高かった。厳格な高血圧管理の必要性が示唆される。

 また、2007年〜2008年には家庭血圧測定を実施し、白衣高血圧、仮面高血圧、持続高血圧が頸動脈病変に与える影響を検討した。その結果、内膜中膜複合体厚(IMT)は正常血圧群に比べ白衣高血圧群、仮面高血圧群、持続高血圧群のいずれでも有意に厚かった。また、最大IMT>1mmと頸動脈狭窄を有するオッズ比もいずれの高血圧群でも有意に高かった。白衣高血圧は無害とは言い切れず、現在の高血圧治療ガイドラインが推奨するように、生活習慣の改善と注意深い経過観察が必要であることがうかがえる。

 今後、心血管病に与える高血圧の影響の時代的変遷、白衣高血圧や仮面高血圧が心血管病に与える影響、家庭血圧を用いた至適血圧レベルなどについて検討を行い、その成果を心血管病のさらなる予防に役立てていく予定である。


ページの上へ