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胃癌・大腸癌

胃癌(Gastric cancer)

 20世紀後半に入り、胃癌の発症率、死亡率は全世界規模で減少傾向にあるが、わが国でも同様の現象が認められている。しかし、日本人の胃癌罹患率は他の民族に比べ高く、胃癌は依然として癌死の原因として重要な位置を占めている。よって、一般住民において胃癌の発症率および危険因子について検討することは、胃癌予防、早期発見の面からも重要な課題である。

 わが国の胃癌の疫学研究は一般的に登録研究によって行われているが、この方法では胃癌発症者の把握が登録率によって大きく左右される可能性が高い。久山町研究では、第1集団(1961年)、第2集団(1974年)、第3集団(1988年)の時代の異なる集団を追跡した成績を比較し、胃癌罹患率および死亡率の時代的推移について検討した。その結果、男女の胃癌死亡率および女性の胃癌罹患率は時代とともに有意な減少傾向を示したが、男性の胃癌罹患率に有意な変化は認めなかった。つまり、近年でも胃癌発症のリスクはほとんど減少していないことが示唆される。

 Helicobacter pylori (H.pylori)感染は胃癌の最も重要な危険因子であるが、すべてのH.pylori感染者が胃癌を発症するわけではないことから、H.pylori感染が単独で胃癌のリスクを規定しているわけではなく、H.pylori感染に他の要因が加わって胃癌のリスクが上昇する可能性がある。久山町研究では、上述の第3集団の追跡調査の結果をもとに、胃癌発症にかかわる危険因子を検討した。その結果、これまでに胃癌発症の有意な危険因子となった因子は、性、年齢の他に、血清抗体で判定したH.pylori感染、血清ペプシノゲン値で判定した萎縮性胃炎、糖代謝異常(空腹時血糖値、ヘモグロビンA1c値の上昇)、喫煙、高食塩摂取、高ビタミンA摂取、低コレステロール血症、白血球数増加であった。このように胃癌は多因子疾患であり、単独の因子で発症が規定されているわけではない。これらの危険因子を多く持つ者に対して、定期的な内視鏡検査を行うことにより、胃癌の早期発見および早期治療につなぐことが望まれる。


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